JR東日本がHP上で、利用者の少ないローカル線の収支(2019年度実績)を公表しました。
https://www.jreast.co.jp/press/2022/20220728_ho01.pdf
資料公表にあたっての記載要旨を簡単にまとめると、、、
・昨今利用客が大きく減少しており、経営環境に厳しさが増し重要な経営課題となっている
・地域の方々に現状を理解してもらい、持続可能な交通体系について建設的な議論がしたい
書くまでもないですが、わたしの解釈は以下の通り。
JR東日本としては会社の努力だけでは経営環境が限界に近づきつつある。鉄道の存続という選択肢だけにこだわらず、より低コストなバスなどへの切り替えも含めた持続可能な地域の交通体系を議論したい。地域の方には「なんとか存続してくれ!」ではなく、一緒になって考えてほしい。ゆえに、その土台となるデータを公表する。
花輪線については以下の通り。
JR東日本ニュース 2022年7月28日より抜粋 https://www.jreast.co.jp/press/2022/20220728_ho01.pdf
各区間の収支の赤字額を抜き出すと以下の通り。
鹿角花輪〜大館 △8.37億円
合計 △23.34億円 ※上記3区間の数値を単純に足したので正確とは限らない
これは、みんなで考える必要のある課題ですので、私の意見ではなく交通体系を考える上で、私が考えた検討ポイントを列記します。
<建設的な議論をする上での私なりに考えた検討ポイント>
◎交通体系の存在目的の定義:そもそも、どんな目的のためにその交通体系が存在するべきか。※通勤通学、買い物、ビジネス、観光客…
→現状に関するデータ、アンケートも必要。そのデータの1つが今回のJR東日本が公表した資料か
・輸送手段: 大量輸送(例:鉄道)なのか、少量輸送(例:バス)でいいのか ※どれくらいの輸送能力が必要なのか
・運行頻度: 3時間に1本なのか、1時間に1本なのか ※頻度が多い方が将来的に定着して利用が増えそうです。また少量輸送のデメリットを、頻度で補うという考え方も。
・接続性: 他の交通機関への乗り換え利便性
・定時運行性: どれくらいの運行正確性を求めるのか ※平時何分くらいの遅れは許容できる?
・速達性: どれくらい早く目的地につくか ※利用者がどれくらい重要視するか
・アクセス性:出発地・目的地から乗降ポイントまでの距離 ※停留所・駅は多い方が便利だが速達性は減少
・災害耐性: 気象条件や災害の影響をどれくらい受けるか
・運賃:どれくらいの金額なのか、距離制なのかゾーン制なのか
※ゾーン制:海外ではよくありますが、同じゾーンの中では均一運賃が適用されます。隣のゾーンまで移動すると運賃が加算されますがそのゾーン内であれば均一運賃 例えば、花輪地区内はバス料金100円だが、花輪地区から十和田地区に行く場合は200円
・運賃体系:鉄道のように同じ会社なら乗換えても一つの運賃体系なのか、乗り換えるたびに、都度初乗り運賃が個別に掛かるのか
・運行者:どの会社が運行するのか? JRなのか別の会社なのか?
・収支: 以上を実現した場合の収益性、持続可能性は? どれくらい行政の補填が必要なのか?マンパワーは足りるのか?それはこの先ずっと無理なく維持できるのか。
<代替手段の事例紹介>
東日本大震災で被災した気仙沼・大船渡線は、鉄道の復旧ではなく、線路だった場所を専用道路として整備し、一般道とルートを組み合わせて、そこをバスが走るBRT(Bus Rapid Transit)方式を採用しています。
バスなので大量輸送性は落ちますが、ルートやダイヤを柔軟に設定できることや、BRT導入後は鉄道時代よりも運行頻度を増やすことで、利便性の向上を図っています。また、以前は終電の関係で街で飲んだあとは運転代行で帰宅していたのが、終バスで帰るというような例もあるようです。
東京と地方、それぞれで存在感 BRTをカガクする JR東日本の気仙沼・大船渡線BRTのメリットは? 東京BRTの乗車ルポも【コラム】 | 鉄道コラム | 鉄道チャンネル