令和3年4月より鹿角市議会議員の笹本真司です。活動情報を発信します!

2月29日 3月定例会本会議 道の駅かづの指定管理案撤回時の解任の違法性の議論について感じたこと

北鹿新聞 令和6年3月1日1面

上の記事にある、物産公社の代表取締役が副市長の名前で提出されていた、道の駅かづの指定管理案撤回決議の際の、質疑のやりとりの中で感じたことを記載します。

※どちらの意見に賛成反対ではなく、法律や手続きの面だけに焦点を当てた見解です。

①「解任の違法性を認め謝罪すべき」という議論について

質疑の中で「会社法342条に照らして違法だ」という主張があったのですが、会社法342条には、少数株主による取締役選任権の確保の観点により、累積投票(例えば6人の候補者から同時に4人取締役を選出するといった、市議会議員選挙に近いイメージ)によって選任された取締役を解任する際の決議要件が記載されています。これに該当する場合、取締役の解任は普通決議(出席株主の議決権の過半数の賛成で可決)ではなく特別決議出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が可決に必要等、条件がより厳格)とされており、通常の株主総会決議で解任することは原則としてできないようです。

【参考】会社法342条(累積投票による取締役の選任)/分かりやすく解説

【参考】株主総会における累積投票による取締役の選任 | RSM汐留パートナーズ司法書士法人

ただ、かづの観光物産公社の取締役選任にあたっては、定款に「取締役の選任については、累積投票によらない」とありますので、そもそも、この会社法342条には該当しないと思います。

したがって、解任案は普通決議として扱われ、会社法339条の「役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる」という記載が、市長答弁の「合法と考えている」の根拠と解釈できるので、少なくとも会社法342条を根拠とした「違法性」については、私の中では見出すことができませんでした。(勉強不足であればすみません)

※追記)上記の説明、342条ではなく304条(議題・議案は事前に請求するが、総会当日にも議題に関する議案請求ができるという内容※)の聞き間違いの可能性あり、304条であった場合の見解を追記します。

※議題:会議の目的 ※議案:具体的な提案

臨時株主総会において、当日出された解任案自体の取扱いが適法か(人事案件が議題であった臨時株主総会であったが、当日出された解任議案も取扱適当と解釈できるか?)というところはあるようです。一般に、議案が出された際に、取扱が適当かどうかは判断されるようですが、仮にその場で取り扱われれば議決はひとまず有効となるようです。ただ、裁判で議決の取り消しが認められれば、取り消される可能性があるそうです↓

【Q&A解説】取締役の解任を求められた場合の対処法について弁護士が解説 | 経営を強くする顧問弁護士|企業法務オンライン(湊総合法律事務所)

取扱が違法と解釈ができるか、別の条項(例えば先に述べた339条)で304条の適用が除外される可能性があるかと言ったことは、正直私としてはなんとも言えないので、専門家である弁護士の見解が必要と思います。市の答弁では合法とのことなので、非公式にでも弁護士の見解を得てのことだと思います。それでも、”違法だ”と確信する立場であれば、そういう意味で「違法性を認め謝罪すべき」という主張は成り立つかもしれません。当事者でない立場から、専門的な事柄にそこまで踏み込むべきかはさておき。

 

また、少し付け加えると以前の全員協議会の中では、

株主総会の中での代表取締役解任案について、別株主から反対意見と解釈できる主張があり、かつ、「本案は可決しました」というような最終確認がなかったので、解任案は成立していない(あるいは取扱継続中?)という議論がありました。

先に述べた通り、今回の取締役解任に関しては会社法上、出席株主の議決権の過半数で可決する普通決議が適用されるため、少数株主の反対意見に決議上の効力はないかと思います。したがって、51%保有過半数株主である鹿角市が解任案を出し、取り下げないまま総会が終了したことをもって、解任案は成立と十分解釈できるのではないかと思います。

最高裁判所の昭和42年の判例裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan)を参照すると、、、

ーーーーーーーーー

株主総会の決議の成立と採決手続を経ることの要否について、

総会の決議は、定款に別段の定めがないかぎり、その議案に対する賛成の議決権数が決議に必要な数に達したことが明白になつた時に成立するものと解すべきであつてかならずしも挙手、起立、投票などの採決の手続をとることを要しない

ーーーーーーーーーーー

とあります。解任案を提出した鹿角市過半数議決権を持っていることは、総会参加者全員にとって明白であったのではと思います。

 

また、少なくとも新聞報道を見る限り(例えば北鹿新聞令和5年9月26日朝刊記事)、株主総会後の9月25日に道の駅かづので開催された記者会見で、解任決議が成立したという認識の元に発言したと解釈できるコメントが、当事者から出ているので、総会に出席した関係者の中でも、当時は解任決議が成立したという認識だったのではないかと感じています。

 

いずれにしろ、その後の取締役会で「株主総会における解任決議は成立しない」ことが確認された根拠として、その見解を裏付ける弁護士事務所作成の文章が示され、かつ、鹿角市側にも提示されているのかという点が気になります。仮に、「弁護士に確認したところ、成立していない」という趣旨のみが根拠であった場合、同じく市長答弁の「弁護士に確認したところ、成立している」という見解と同レベルの主張であり、過半数株主の見解を否定し、解任決議が成立しないと結論づけるには、もう少し説得力が欲しいところですし、市民にとって議論がわかりにくくなっている一つの要因かなと感じます。

(もし、取締役会の主張が弁護士による正式見解文を示す一方で、鹿角市の主張が弁護士の正式見解文を示さない主張であれば、正式見解文を示した取締役会の見解により説得力あると判断できると思うのです。)

 

ただ結局、鹿角市としては、民事訴訟で長い時間をかけて争って白黒をつけ、それがどういう判決内容であったとしても、最終的に鹿角市全体の利益を損ねるデメリットの方が大きいだけであろうという観点から、混乱収集のために解任を撤回したという趣旨であると理解しました。

 

いずれにしろ、解任決議は撤回され、5年間の指定管理契約も議会で承認されました。

早く実質的な経営改革の議論が深まって欲しいです。